おもちゃ病院 修理未然防止対策

    大切なオモチャと電池、今や密接な関係です。本会でできる電池関連アドバイスをまとめました。


その0.電池の基本的な知識 大きさや用途などを記載します。

  電圧 形状 サイズ 主な用途 価格
単1 1.5 筒型 30φ,65mm 大型玩具 \105/1個
単2 1.5 20φ,50mm プラレール動力車 \105/2個
単3 1.5 10φ,50mm 玩具一般 \105/4個
単4 1.5 7φ,45mm 小型玩具 \105/4個
006P 9.0 角型 xxmm ラジコン送信機 \105/1個
LR44 1.55 コイン型   携帯、ミニゲーム \105/2個
LR41 1.55   \105/2個
CR2032 3.0   \105/1個

 交換用の電池を買うとき、参考にして下さい。 百均にある電池は安価ですが、早く電池が切れる可能性があります。
 本会で用意している電池も保存時間が長いため、寿命も短いです。ただしテスターで測定しているため問題はありません。


その1.電池の液漏れ対策:過放電させるな!(電池の過労死)

 電池を使う玩具は電池切れ・電池の液漏れによる電源端子発錆・腐食などで動かなくなるケースが後を断ちません。
 
これはなぜなのでしょう?皆さん心当たりはありますか?

 自分も子供の頃、電池を入れっぱなしにして折角のおもちゃを台無しにした苦い経験を持っています。当時はマンガン電池が主流で、錆び方も大抵赤錆になりました。
 
化学的に言えば酸化反応です。電池の中には電解液が入っており、マンガン乾電池には塩酸が入っているため完全放電してしまうと電池本体の亜鉛缶が腐食して穴があき、液が漏れて錆びてしまいます。最近は塩化アンモニウムでなく塩化亜鉛を使用しているため液漏れは減りましたが、それでも過放電には注意が必要ですね。
 反応式:
マイナス極 ZnZn2++2e- 、プラス極 2H++2e-+MnO2→Mn(OH)2 ※亜鉛の缶が腐食して穴が開く訳です。
 だから昔から液漏れの悲劇を知っている電池メーカーは「電池は器具を使わないときは外してください」と注釈を加えてきたのです!そこんとこヨロシク。

 現在主流のアルカリ乾電池も液漏れを起こします!
 意外なことに、液漏れが少ないと謳われた「アルカリ電池」の液漏れがやたらに多い!電子系玩具の待機電力で過放電になるケースが散見されます。
 スイッチを押していなくとも回路にはわずかながら電流が流れており、1mAと仮定しても2000mAhの電池(標準的な単3型電池)では2000時間[約83日]で完全放電してしまいます。

 マンガンorアルカリ電池は金属亜鉛が錆びることにより電力が得られます。逆にその「錆び」反応がなければ電力は発生しません!!過放電も正常な反応が起きている証拠(爆)
 それだけに取扱には細心の注意が必要です!過放電(電池の使い過ぎ≒過労)は百害あって一理なし!使わない電池はすぐ外しましょう。

 液漏れの基本は過放電。接続していても待機電力が元で過放電は発生します!

 場合によっては修理不能になります(過労死) 一部機能がマヒする場合もありえます(後遺症、寝たきり…など)


鍵盤系楽器、電池を入替えても音が鳴らない。
電池ふたを開けたところ既に錆びていた。
おそらく電池が過放電して液漏れしたらしい。

端子の裏側も錆びていた。しかも悪いことに
リード線まで断線、ボロボロになっていた。
電線にまで液が伝っていった様子です。
電極の研磨が基本、錆びた部分をこすります。
場合によっては電極の作り直しもありえます。
腐食した電線は交換が基本。
電線を変えなくともハンダ付けは必須です。

・たかが電池、されど電池。取り扱いは慎重に!!

液漏れのメカニズム(おさらい) 電池入れっ放し→待機電力で消費→80日で完全放電→それ以上使う→缶が酸化腐食し穴が開く→液漏れ

待機電力1mA,電池容量2000mAの電池の場合の完全放電所要時間:2000mAh/24h/1mA=83.333(day)

※ニッケル水素蓄電池は割と過放電に強く液漏れも起きにくいですが、それで電池にダメージを及ぼし充電容量が減る場合があります。
 この式を参考に、定期的な充電をお願いします。


 その2.電池切れの小噺(意外によくある事例集)

 子供の特性として、旅先でおもちゃが欲しくなって駄々こねることはよくある話。値段も手ごろなのでつい買ってしまうことも多々あります(リアル子育て体験者の実話)
 そういう玩具は電池付で売られていたりしますが、その電池が既に劣化しているケースが往々にしてあります。
 メーカーから仕入れて相当の年月が経って放電しているにもかかわらず、未使用だから新品同様だと考えている方がとても多いのです!
 結果「電池は使ってないのに、ぜんぜん動かない」「買ってすぐダメになった…」と嘆く貴兄も少なくありません。

 電池は使っていなくとも年月がたつと自己放電してしまいます。だから電池には使用推奨期限が書いてあるのですが…見る人はわずかです!
 我輩は電気技術者、電池チェッカーで調べないと安心して使えません。残量を見ないと正常動作は期待できませんよ?

 おもちゃ病院で預かる玩具には必ず電池を入れてください!その電池、未使用でも経年劣化しているかもしれませんよ?

※電池の自己放電計算式

 待機電力と同じだと思ってください。自己放電0.1mA,容量2000mAhと仮定すると 2000mAh/24h/0.1mA=833.33(day) → 約2年3ヵ月で放電。
 ニッケル水素蓄電池は大容量放電できる分自己放電も多いので気をつけてください。1年しないうちに放電して容量なくなります(推定0.3mA以上)
#ディズニーランドにありがちな電池つき販売もほめられたものではありません。
#おもちゃを長期保存したければ、新品でも一度封を開けて電池を取り除いて下さい!自己放電もバカになりませんよ?


 その3.電池の電圧、内部抵抗、など。

 電池チェッカーでは普段見えない電池の「内部抵抗」が見えます。内部抵抗は電池の化学反応と関係があり、反応速度が低下すると内部抵抗も低下しやすくなる傾向があります。
 電気技術者の使用するアナログテスターには10Ωの負荷抵抗がついた電池チェッカーが内蔵されており、それで判定すると一目瞭然です。(電池が消耗するので測定は4〜5秒程度)
 普段負荷のない乾電池は起電力1.5Vですが、内部で消耗していると10Ω負荷をかけたとき1.2〜1.3V程度に落ちます。これが内部抵抗の仕業です。

 我々が使う自家用車の鉛蓄電池もエンジンの始動モーターを回すとき内部抵抗のため電圧が大幅に低下します。特に冬は低温により起電力も低下するためエンジンがかからないこともあります。
 (昔の鉄道車両(特に気動車)はそれを嫌い、始発便になる車両は不経済ながら一晩中エンジンを回していました)
 冬になると使えなくなる電池が出てくるのはそうした事情もあるもの。所詮電池も生ものですよ!

 逆に夏は電池内化学物質の反応により内部抵抗が大きくなる場合もあります。直射日光の当たる自動車内に置いてある電池が早く痛むのはそのため。

 電池も人間と同じく、使う環境を選ぶものだと思ってください。


 その4.鉛蓄電池の使い方(乗用玩具に使われる)

 最近は鉛蓄電池を使う乗用玩具が多く来院するため、ここで鉛蓄電池の正しい使い方を記します。
 原因の大半は鉛蓄電池の放電。中には充電されず放置された結果、蓄電池が劣化して使えないものも多くあります。

 鉛蓄電池の用途は自動車用バッテリーが有名で、基本的に扱いやすいです。
 ただし長期間使用するなら満充電での保管が望ましく、そのため自動車の場合はエンジンをかけてオルターネータ(発電機)からバッテリーへ常時充電することにより満充電を維持しています。
 しかし電動常用玩具は長期放置で過放電になりやすく、電極に硫酸鉛の結晶(サルフェーション)が発生して充電できなくなります。
 本会ではパルス発生器などで硫酸鉛の結晶を分解してバッテリー再生を行ってきましたが、既に痛んだバッテリーを再利用しても寿命が長くないため、基本的に交換をお勧めしています。価格は1200円前後ですので承知置き下さい。

 鉛蓄電池が8時間程度の長時間充電で回復する場合は、単に充電不足であります。
 本会では30分程度の短時間充電でバッテリー電圧が少しでも上がっていれば「見込みアリ」として持ち主様へ8時間充電を依頼し、それでもダメならバッテリー交換を提案しています。

 この手の玩具は親類有人からの譲渡事例が数多く報告されており、実際本会でも多くの持ち主様が「充電方法がわからない」と言っています。説明書がなければ尚更そうなりがち。
 本会は充電方法の推測・判明した場合の使用方法の伝授など、そういう方の相談相手となるよう努めてまいります。

※ 鉛蓄電池の正しい使い方・注意事項   おもちゃに使われるものに特化して書きます ※

・ 通常月1回、最低でも半年に一度は充電する(一度完全放電すると早く劣化し、パルス充電しない限り復活しない)
・ 6Vバッテリーの場合、8V以上印加しない(バッテリーを破壊します)
・ 充電するときは1A以上流さない(一般的な6V4Ahバッテリーの場合、1.2Aが限度) [俗称:0.3Cの壁,4.0(Ah)x0.3(C)=1.2(A)]

なお本会には蓄電式ソーラー発電に通じている会員が一名在籍します。その者に尋ねると明確な答えが返ってきます。


info3 | 2007年開催実績 | 更新13/05/04

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